【東チベット・カム地方】東アジアどっぷり紀行④ -ラルンガル・甘孜-
前回からのつづき・・・
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成都からマルカムを経由して色達(セルタ)のラルンガルに向けてバスは進みます
内心はドキドキ、外国人の立ち入りが禁止されている場所へ入れるのか、無事ラルンガルのゲートを通過できるのか
幸運なことに仕事熱心じゃない公安のおかげと極寒で監視の目がゆるくなる時期が重なって、バス車内での巡回チェックは行われなかった
万が一バスの中に公安が乗り込んできた場合には、ひたすらまぶたを閉じて寝たふりを決め込むという脆弱な作戦を立てるくらいしかなかったので、ラルンガルに入れて本当にホッとしました
基本情報
国(地域):東チベット カム地方
ルート:⑴ラルンガル▶︎⑵甘孜(カンゼ)▶︎⑶再・成都▶︎⑷康定(カンディン)▶︎⑸理塘(リタン)▶︎⑹丹巴(ダンバ)▶︎⑺再々・成都
期間:30日間
時期:11月, 12月
ラルンガル(色達)
ラルンガル僧院は中国四川省カンゼ・チベット族自治州色達県にある世界最大の仏教学院がある。標高4,000mの高地に、4万以上の修行小屋が建ち並ぶチベット仏教の聖地である。
ラルンガル
「Welcome to Tibet!」バスを降りると少年僧が笑顔で元気に言ってくれた
これを聞いて私は今からのチベットの旅が最高のものになるって確信した
旅仲間とシェアタクシーを利用し急な坂道をのぼってホテルまで向かう途中、突然現れたたくさんの赤い小屋たち、同行者のKちゃんが「天国に来たみたいだ・・・」とつぶいやいていて本当にそのとおりだとうなずきました
ずっと来たいって強く思っていた場所にいま私は来たんだ
インドのブッダガヤから思いを温め4年かかってようやくここに来たのです
標高は4,000m近くある
頭痛薬の紅景天を飲んだけどほとんど効いてないみたいで、とにかく頭が痛くて重い
タジキスタンのムルガーブの時と全く同じ症状だったけれど、寝込むわけにはいかない
ゆっくりでもいいからと言い聞かせて坂道を歩きます
他の仲間も息が苦しそうだったけど、それ以上にラルンガルに来た喜びと興奮のほうが勝っていたと思う
こんな景色見たことない、こんなたくさんの修行僧も見たことない
尼僧院には小さな女の子からおばあちゃんまでたくさんの人がお経を読んだり勉強したりと修行に励んでいました
その独特な空気感に圧倒されてあまり写真も撮れず邪魔してはいけない雰囲気を感じます
ゴンパには朝早くから夜遅くまで一心不乱に五体投地するチベット人やマニ車を片手にコルラする人をたくさん見かけました
そういった光景を眺めていると、この人たちは人生に迷いがないんじゃないかと思えてくる
だって揺るぎなく迷いもなく信じるものがあるんだから
ラルンガル滞在の途中ではチベット仏教の葬儀のひとつ、鳥葬を見学しにでかけました
チベット仏教では人は亡くなると魂はなくなりただの肉体となる
その肉体を砕いて鳥類に捧げることで天へと送り届けることができる、ということ
また人間は生きている間、他の生き物から生命を頂いているから死んだこの肉体を他の生き物に還元しよう、ということ
そのほか、火葬するには薪になる資源が乏しいという理由から鳥葬が一般的なのだそう
映画で観たおくりびとでは、死んだ人に化粧を施し、できるだけ綺麗な姿で送り出してあげようという死んでもなお、人権を意識させる日本ならではのプロセスに感じる
人は死んでも人のままだ、人のカタチとして存在している間は丁寧に扱おう、というのが伝わる
相反するチベットと日本の死に対する捉え方であるけれど、どちらも美しいと思った
鳥葬が行われる丘の上で待っていると棺桶に入った遺体が運ばれてきました
棺桶の周りには5人ほどのチベット人がお経を唱えること数分後、遺体が取り出されて斧のようなもので砕いていきます
その近くで見ていた遺族らしき集団は誰も泣いている人はいなかった
血の匂いを嗅ぎつけてか、鳥葬が行われる丘には次々とハゲワシが集まりだし、今か今かとみな遺体の一点を集中して見つめていました
たかが鳥、されど鳥、翼を広げて舞うハゲワシは2mはあるんじゃないか、というほどものすごい迫力で自分も狙われるんじゃないかと思うほど威圧感がありました
職人が仕事を終えてハゲワシに向かって声をあげると一斉に食らいつくハゲワシ
弱気な奴にはおこぼれももらえないよ、というくらい肉体に対してハゲワシが群がりすぎているようにも見えます
その光景には終始圧倒されるばかりで・・・
葬儀が終わったあとは皆無言で宿まで帰りました、もう感想を言い合う会話はいらなかったのです
滞在して3日目の昼、丘の上からラルンガルの景色を一望できる場所まで歩きました
そこで見たのはやっぱりここは天国だということ
この満たされるような気分はなんなんだろう
甘孜(カンゼ)
甘孜県は中国四川省カンゼ・チベット族自治州北西部に位置する県。県内は峡谷と高山が多く海抜は3,325mから5,688mまで達する。県名のカンゼはチベット語で「白く美しい」を意味する。
甘孜(カンゼ)
乗り合いで一台の車をチャーターしての移動はとにかく窮屈だった
ラルンガルですでに標高は4,000mほどあったのに、移動中はさらに寒くなり酸素も薄くなっていたからそれ以上の峠を越えてきたのだとわかります
狭くて舗装も十分にされていない道はドライバーの荒い運転スキルが重なって恐怖の時間だった
仲間の1人が「もう少し運転気を付けてよ」とドライバーに言うとイラッとしたのかさらに運転は荒々しさを増していく悪循環
谷底にいつ落ちてもおかしくない状態で私は車の中で縮こまっていました
そんな恐怖とピリついたムードの車内から解放されて山道を越え、カンゼに到着
中心部に着くと不自然に作られた街で標識や看板は中国語だらけ、新しく最近塗り替えましたって雰囲気が漂っていました
ラルンガルに行ってからのカンゼにはあまり期待できないかな、と思っていたけれど少し奥を歩けば全然そんなことはなくて、カンゼの人たちはとても友好的だしいい感じです
そしてカムの男たち、本当にかっこいい!なにこの勇ましくてサムライみたいな人たち
ちなみに中国式のチベット文化圏はチベット自治区とか◯◯省といったパート分けをしますが、チベット本来の地理ではウ・ツァン、カム地方、アムド地方と大きく3つに分けられ、今回私が行ったチベット圏は本来のカム地方にあたります
カムの男がかっこいい、からこの流れ
さて、またタクシーを利用してカンゼゴンパへ行きました
12時くらいに着いたのでちょうど僧侶たちの昼食時間に僧院の中に入れてもらえることになりました
少年僧が小走りしながら配膳をする姿は一休さんのようで可愛らしかった
食べる前にお経を2分ほど唱えてからみな一斉に食べ始める、みんなすごい静かに食べるんだなぁ
こんなプライベートな時間に中にいれてもらえるなんて幸運でした
次は河にかかる橋を見に行ったり、また別のゴンパを見学しに歩く
「中に入ってもいいですか?」と聞くと年配の僧侶は快く迎え入れてくれました
2階にある奥の部屋まで通されると、「みなさん座ってください」のジェスチャーをされる
するともう1人の僧侶が私たちのためにお経をあげてくれました、その時間10分ほど
当然何を意味する言葉なのかまったく分からなかったけれど、その気持ちがすごく嬉しくて涙を堪えるのに必死でした
来るべくしてここに来たんだな、チベットが私を引き寄せてくれたんだな、としみじみ思い幸せな気分に
1週間をともに過ごした仲間とも明日で解散、このままチベットにいたいけど私はビザ更新のために一度成都に戻らないといけません